相続業者の選び方

インターネットで「相続」と検索すると、国税庁のHPから相続の手続きを行っている司法書士や行政書士、税理士、弁護士など様々なページがヒットします。

「相続」と検索なさったということは少なくとも相続に関してのご興味をお持ちあるいは、相続に関してのお悩みを抱えてらっしゃることと思います。

ところが、相続に関しての相談を受けている業者(司法書士、行政書士、税理士、弁護士などから民間の会社まで)はとても数が多くどちらに相談していいものか判断に迷うのが正直なところです。

話を単純化するために自動車を購入する場合に例えてみますと…

自動車を購入される場合には次のようなことを検討するのではないでしょうか?
①自動車の購入手順を調べる
②大まかな予算をきめる
③目的や用途、ライフスタイルなどに応じて車種を絞る
④試乗する

自動車の場合ですと、目的や用途あるいはライフスタイルに合っていないとせっかく購入しても「不便だ」とか「使いにくい」ということになってしまい、また別の自動車を購入するなどということになりかねません。

足元の具合が良くない年配の方が利用するので「乗り降りがラクな自動車がいい」と考えているのに、車高の低いスポーツカーを購入したというのは、あまりに極端で、「そんなことはないだろう」と思われるかもしれませんが、相続の手続きに関してはそのようなミスマッチが頻繁に発生しています。

ここでは、相続手続きに関するミスマッチを防いでいただくために「相続手続きを相談(依頼)する場合の選択のポイント」をご紹介いたします。

1.専門家の業務範囲を知っておく

「相続の手続き」は、ご家族の状況などに応じてどのような手続きが必要なのかが変わってきます。ご家族の仲が良く(揉めていない)、相続税などの税金も発生しないので、取得した財産の名義変更だけをすれば良いという場合には「司法書士」に依頼すればよいでしょう。

 しかし、税金が発生するという場合には名義変更よりも税金の問題のほうが深刻ですので税理士に相談するべきでしょう。
 また、ご家族の仲が良くないなどの理由から「誰がどの財産を取得するのか?」といったことでもめるのが目に見えているような場合には税金の問題よりも更に深刻ですので弁護士に相談すべきです。

以下に相続手続きに関わる専門家の業務範囲を示しておきます。

専門家の守備範囲 司法書士 税理士 弁護士

相談についての基本的な考え方として…
①税金が発生せず名義変更などだけ → 司法書士
②税金が発生する場合       → 税理士
③当事者同士での話合いがつかない → 弁護士

※番号が大きいほうが優先すると考えて下さい。
登記もあり、税金も発生するという場合には税理士に相談します。

図に示した他の専門家ですが、基本的には上記①②③の専門家に依頼すれば必要に応じて紹介してくれるので、ご自身で探す必要はないでしょう。

なぜ①②③が中心になるかといいますと、相続手続きの中には国家資格を有しているものしか行えない業務(登記関係は司法書士、税金関係は税理士、法律問題は弁護士のように)があるからです。

ですので、行政書士に相続手続きを依頼しても税金問題は税理士に別途依頼、法律問題があれば弁護士に別途依頼することになるので上記①②③が中心になるのです。

また、最近では複数の専門家が在籍している相続手続き代行業者も増えています。(いわゆるワンストップサービスを売りにしている)

これらは、相続に特化した精鋭揃いのものもあれば実際には単一の専門家しかおらず他は名義を貸しているような看板倒れのものもあります。運営者(代表者)がどのような人(専門家or業者)なのかは確認してみるとよいでしょう。

運営者が①②③のような国家資格者でない場合には、相続案件を他の専門家に紹介する業務を行っている業者ですので、その業者の手数料分だけ費用がかさみます。

民間資格系の専門家や専門業者は、気軽に多様な相談ができるメリットの反面、国家資格者のように独占業務ではないため別途専門家への依頼が必要となります。これらの業者は、経験豊かで頼りになるものもあれば実態を伴わないものも散見されるようですので、選別という観点からは非常に難しいです。

2.HP(ホームページ)の情報量

専門家の業務の質を判断するのは依頼者側からすると相当難しいと言わざるを得ません。

「どこに頼んでも同じように見えるから、それだったら価格の安いほうが…」と依頼してしまい、業務の質が低かったため思わぬ追加の支出が必要になってしまったという話もよく耳にします。

選別方法としてカンタンで分かりやすいのは「HPに掲載されている情報量」です。

「相談や申告を〇〇件こなしました」という実績ももちろん重要なのですが、相続の手続きは個人個人で状況が大きく異なり、金額の多寡や難易度及び必要とする期間も異なるにもかかわらず同じ1件として数えてしまうと、実態を見誤ってしまいます。
実績数に関しては、少ないと困るけれどある程度の数があれば、それ以上はあまり問題では無いと考えたほうがよいでしょう。

実績数だけで判断できないとなると、HPの情報量を見るのがわかりやすいです。

HPは専門の作成会社に依頼し作成しているのですが、画像やレイアウトを整えたり綺麗にしたりということは外注できるのですが、専門的な内容の解説などの文章は自分自身で書かなければいけません。つまりHPを外注したとしても、記事の内容は自分自身で作らなければいけないんですね。

看板倒れの業者であれば、具体的な専門的情報がほとんど無いのです。

事例を多く取り扱っていたり、業務研修などをしっかりと行っている業者(専門家)であれば一定量以上の情報量があるHPを作成することができるのです。

全部の情報を読めというわけではありませんが、ある程度の情報量があり、ご自身の気になる部分をご覧になった際に、それなりに分かりやすい記事になっていれば信頼の出来る業者(専門家)であると考えられます。

HPの情報量以外にも、可能であれば次のようなこともチェックするとよいでしょう。

・知人の紹介
知人に専門家を紹介してもらうパターンです。価格、対応の良さ、品質など一定以上の満足感がないと知人に紹介はしませんから、紹介されている業者(専門家)は一定以上の質が担保されていると考えられます。

・担当者は誰?
担当者が誰なのかは確認したいところです。

人数の多い事務所や業者になると、国家資格保有者とそうではない職員がいて、国家資格者ではない職員がほとんどすべてをやってしまうということもあります。窓口になってくれる担当者が国家資格を持っているのか、どのような国家資格なのかによって業務の質が著しく変わるのは当然でしょう。

・セミナー、講演、著作、ブログなど
専門家の人となりを見るのに、セミナーや講演に参加して会ってみる(話を聞いてみる)というのも有効です。

依頼まで一刻を争うような場合は難しいですが、遺言作成のように比較的余裕が有る場合には有効です。

セミナーや講演が難しいという場合にも、著作を確認してみるとか、もっと敷居を低くすればメルマガやブログなどを読んでみると人となり雰囲気などを見ることが出来ます。話や文章のわかりやすさから業務の質がわかるとともに、どんなタイプの人なのかも感じ取れます。

(相続手続きでは何度も顔を合わせることになる専門家ですから、相性の良さそうな人を選ぶのも大事なことです)

3.報酬・料金の明瞭性と注意点

相続手続きは一生に何度もするようなものでありませんので、報酬・料金の誤解のないようにしっかりと確認しておきたい点がいくつかあります。

・リスクに対する対価である
税金関係や法律問題について生じる報酬や料金は、単なる「手続きの代行あるいは書類作成の対価」だけではありません。

税金関係ですと、クライアントの方が最も有利となる(税金とリスクが最も小さくなるような)方法を選択するために、法律の解釈をし通達や判例なども参照しながら高度に専門的な判断を行っています。(法律問題はもっと複雑になります)

これらの判断によっては税額で数百万から数千万、場合によっては億までの金額が変動するため、証拠資料の補強や事実関係の確認及び調査などに多大な労力や時間を要し、リスクを負っています。

安さを過剰にウリにしている業者などは、証拠資料の補強や事実関係の確認及び調査などをしっかりと行っていないので、追加の罰金が生じたり余計な税金を払っていたりというようなリスクが大きいです。

・追加発生の料金がある場合も
相続手続きは人によって状況が異なりますので、画一的な料金体系を開示するのが難しいと言われています。

そのため、多くの業者(専門家)は基本料金にプラスして、土地が1つ増えるごとに〇〇円、相続人が増えるごとに〇〇円増しということが多いです。

基本料金だけで全てが完結する場合もあれば、追加料金(積み上げ料金)が発生することもあるので「基本料金200,000円〜」と謳っている業者が必ずしも安いかというとそうでもなく、追加料金(積み上げ料金)も考慮すると他の業者と変わらない、ということもよくあります。
追加料金部分の業務と報酬がどのようになっているのか説明してくれる業者(専門家)は良心的だと思われます。

・条件付きサービス
「遺産総額が5,000万円以下で相続人が○人以下、財産の種類が△△のみ」といった場合に料金が安くなる条件付きサービスを実施している業者もあります。

手軽にサービスを利用したいという方には価格面も含めてメリットも多いですが、条件をクリアするのが難しいのがネックです。

また、条件付きサービスの場合には先ほどの証拠資料の補強や事実関係の確認及び調査などを一部簡素化している場合もあります。リスクをどこまで受け入れられるかは検討すべきです。

(まとめ)

1.専門家の業務範囲
①税金が発生せず名義変更などだけ → 司法書士
②税金が発生する場合       → 税理士
③当事者同士での話合いがつかない → 弁護士

2.業務の質判断基準
※実績数だけでは判断できないので
①HPの情報量が多いか?
②担当者は誰?(国家資格者なら◯)
③可能なら…セミナー、講演、著作、ブログ、メルマガなども見てみる

3.報酬料金
①安すぎるのは要注意(リスクが高い)
②基本料金だけではない
③条件付きサービスはリスクを勘案